湾岸エリアの具体的な災害危険性(水害・地震・液状化・津波)

イメージではなくデータと発生した事実に基づき書いています。

水害についての考察

湾岸エリアと言えば、イメージとは違って災害リスクが比較的少ない地域ですが、この水害(高潮)に関してはさすがにリスクが感じられるものになっています。

そもそも高潮って何?と思う方もいると思いますが、大雑把に言うと台風や強い低気圧が原因で起きる水害です。
江東区のブックレットでは以下のように説明されていました。

高潮のメカニズム

実際に起きた被害で言うと、2018年の台風21号のときに関西空港が水浸しになってしまった件が最も分かりやすい例かなと思います。
江東区のブックレットによると、江東区では過去に以下のような被害があったようですが、これらはいずれも荒川の流域のもので湾岸エリアでの被害履歴はありませんでした。

江東区の高潮被害の歴史

東京都の『高潮リスク検索サービス』で見る江東区周辺の高潮リスクは以下のような感じなので、

江東区周辺の高潮リスク

少なくとも湾岸エリアでは、お台場、有明や新豊洲は高潮の被害とは無縁そうですし、豊洲と東雲の北側に多少のリスクがあるという感じでしょうか。話題の晴海フラッグあたりも高潮はリスクがありますね。
荒川流域のリスクと比べてしまうと誤差の範囲程度にしか見えないですが、場所によってリスクがあるのは間違いありません。

何となく、月島・勝どき⇒豊洲⇒東雲あたりは島になってるので危険なイメージがあるのだと思いますが、少なくとも『高潮リスク検索サービス』で見る限りでは、芝浦のような沿岸地域と変わらないですし、荒川に限らず河川流域が危険であると言えると思います。

なお、湾岸エリアは満潮時でも海抜ゼロメートル地帯ではありません。

以下は東京都建設局の資料ですが、薄いピンクが満潮時に海抜ゼロメートル地帯になるところです。

液状化についての考察

湾岸エリアの災害リスクは何といっても液状化ですよね。
「東日本大震災で浦安のあたりが液状化したし」と適当に語られることが多いですが、国土交通省が実地調査した結果が以下のものです。

液状化の実態調査

赤が液状化があった場所で、青がなかった場所です。赤が圧倒的に多い地域は旧江戸川以西の千葉県ということになります。
湾岸エリアで見てみると豊洲がやや目立つ感じで、あとは辰巳と新木場が濃いですね。無論ノーリスクではありません。

2022年3月に東京都の液状化予測が更新されましたので差し替えます。丸のあたりが湾岸エリアです。

以前の予測よりも広い範囲で危険度が増していると思います。

で、そもそも液状化って何が問題なのかというと一番の問題は家が傾いたり倒壊したりすることです。

前述の浦安の液状化実態調査では杭の打ってあるマンションが傾いた例はなかったとのことで、湾岸エリアはマンション(杭を打っている)ばかりですので、倒壊等に繋がることはないと思われます。

SUUMOの杭打ちの説明はこちら

くい打ち

なお、東日本大震災時に東北地方で大破したマンションも0件とのこと。

湾岸エリアの液状化で問題になるとすればインフラの損傷リスクかなと思われます。

埋め立ての歴史

新しい埋め立て地ほど液状化が起こるということなので埋め立ての歴史も貼っておきます。

豊洲市場のあたり、晴海フラッグのあたり、辰巳の南、お台場青海全般は比較的新しいことが分かります(戦後の埋立地)。

右端のピンクの地域は葛西臨海公園のあたりです。浦安などと並んで更に新しい地域となっています。

地震と津波についての考察

次に地震について。

東京都のハザードマップを元に、湾岸エリアは逆にすごく安全という話は語りつくされてるかなと思います。

こちらは、建物倒壊危険度と火災危険度を元にしたものですが、この2つを元にすると地震に関して湾岸エリアは非常に安全ということになります。

ハザードマップ

地震による被害は主に火事と津波です。つい最近まで私は内陸の方に住んでいましたが、火事の危険に関しては実感として確かにそうだなと思います。木造の戸建が密集してますので。

で、津波はどうなのか?と。
「湾岸エリアは危険派」だった私でも、さすがに東京湾の形状を見れば津波は大丈夫だろうと思ってます。

以下は歴史上、東京湾の津波の被害はどうだったか?という日経の記事に記載されている、過去の津波の高さの情報です。100年に1度レベルの地震では、最大2m、大体1.5m平均ということが分かります。

ちなみに東日本大震災が40m、明治三陸沖地震で38m、関東大震災の時の熱海で12mです。

津波の歴史

以上のことから、(1)東京湾が入り組んでいる地形であること、(2)川がたくさん流れ込んでいること、により、津波に関しては大きな心配する必要はないと考えてよいかなと思います。

2mが安全と言ってるわけではなく、数百年単位で見て最大2mというのは外洋沿岸とは桁が違うという意味です。

トンガ火山噴火の影響

2022年1月15日にトンガの火山噴火の影響で日本に津波が到達しました。

その時の津波注意報の発令状況がこちら。見たまんまで特にコメントはありません。

気象庁

首都直下地震に関して

テレビドラマの影響をもろに受ける人が多数来訪していますので、首都直下地震について追記します。

まず内閣府が以下のページに公開している画像から。

首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告)

首都直下地震で倒壊する建物
内閣府:250mメッシュ別の全壊・焼失棟数(都心南部直下地震、冬夕、風速8m/s)

この図は内閣府が出しているもので、首都直下地震で全壊したり焼失したりする建物の棟数予測分布図です。175,000棟が全壊し、倒壊による死者は最大11,000人という予測になっています。

図を見て分かる通り、首都直下地震で最も危険なのは湾岸エリアというと思ってる人がいますが実際はその逆です

なお、「タワマンは地震で…」と言い出す人も必ずいますが、確かに地震の時タワマン上層階は大変でしょうけど、当たり前のことながらタワマンは湾岸エリアだけでなくどこでもあります

私は湾岸エリア在住ですが、タワマンに住んでいません。もちろん湾岸エリアに板マンもたくさんあります。

タワマンのリスクはあくまでもタワマンのものであり、湾岸エリアのリスクではないです。

湾岸エリアを気に入らない人がたくさんいるのは住んでみて分かりましたが、東京全般で不動産価格が上がっていても、「湾岸エリア高騰」などのように報じるマスコミも悪いように思います。

そういう取り上げ方が一番人の興味を引くのでしょうが、まるで富の象徴のように取り上げられることでテレビドラマの影響か「首都直下地震で沈没しろ」みないなことを言う人が出てきます。

そもそも災害での人の不幸を願うようなことをすべきではないですが、それより前に自分の住んでいるところのハザードマップを確認した方がいいと思います。

塩害

この記事も長くなってきたので塩害は別記事にしました。

まとめ

危険な部分と実は危険じゃない部分に関して先入観にとらわれずに知識を得ることが重要と思います。特に火災に対しての安全性に関しては大きくプラスです。

なおオリンピックの影響で、電柱はだいぶ地中に埋めたようですが、早く全部地中に埋まるといいですね。

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